求めてくる口づけに合わせるように息を吐けば、甘い声が零れる。



「んん……ぁ……」


「ああ、やっぱり我慢できそうにない。一刻も早く結婚しようファウラ」



 口角をぺろりと舐められ、ピクリと反応するファウラに再び容赦なく堪能しようとしたルイゼルトを止める声が聞こえてきた。




「へーいーかーーー!!」




 足場の悪い瓦礫の道をズカズカと歩いてやってきたのは、怒りを露わにしたユトだった。

 悪魔の姿の象徴だった角と翼は無い。

 無事なユトの姿に思わず嬉しさのあまり、彼に手を伸ばしたがやめろと言うようにルイゼルトが向きを変えた。



「ファウラ、心してかかれ。ユトの説教の時間が始まるぞ」


「えっと……?」


「はあ……こんなことなら、ファウラ連れてここから離れておくべきだった」



 あまりにも命の危険があった後とは思えないいつも通りの空気に、ファウラは楽しそうに笑う。こんな当たり前の日常が続いて行くのだと思うと、嬉しくなる。

 見上げた空に浮かぶ月にそんな幸せを、どうか見守っていてほしいと静かに願った。