夜空がこんなに近くに感じるのも、風を切る感覚も……全てユトと共に飛んでいるからだった。

 体が宙に浮くという感覚に思わず身を縮こめた。




「簡潔に話すと、陛下は悪魔の僕と契約し、その代償に悪魔の命の根源が陛下の体を蝕み、その体もろとも支配する呪いを受けた。悪魔が支配した陛下を、神官達は利用しようと企んでいる。これが神の力だと偽り、再び戦争をするつもりなんだ。悪魔という神が統べる国を作ろうとね」


「色々聞きたいんだけど、まず、えっと……ユト、悪魔だったの?」


「驚くよね。だから早いうちにファウラ様に伝えた方がいいって言っていたのに。陛下ったら、ファウラ様に嫌われたくない一心でこの最悪な事態まで引き延ばしちゃったんだ。重ね重ね、ファウラ様には謝らないといけないことばかりだよ」



 肩を落とすユトから察するに、彼もまた色々苦労していたらしい。

 人間とは異なる姿をした悪魔と知った今だが、いつも通りのユトがそこにいるということに変わりはない。

 他にもユトは神官達の目立った行いに目を付けて監視していた事、ファウラの力の存在を知っていた事などを話してくれた。ハヒェルが話していた自身の力に着いても、ルイゼルト同様に聖女の力で悪の存在を跳ね除け、消し去る力があるという言葉に胸を撫で下ろした。

 これまでの苦労に溜め息を零しかけるユトだが、切り替えるように声音を少し変えた。



「ファウラ様、本当に申し訳ないんだけど、僕と陛下は君を生贄にしようとしていた。そうして互いに国を守ろうとしていたんだ。だけど、陛下は君を狂う程に愛してしまった。それはつまり、陛下は国もファウラ様も両方守る選択を選んだ」


「うん」


「ただ時間は待ってはくれなかった。力を使い過ぎた陛下の身を根源が支配しようとしている。ああなってしまった以上、僕が干渉することは難しい。生贄にしようとして、その上こんな事態に巻き込んでしまった信用のない立場な僕に、どうか力を貸してほしい」



 迷う選択が無いファウラは大きく頷いて、即答する。