『いい?ファウラ。勘違いしないでほしいの。私はあなたのお父さんを信じてここにやってきたの。周りがどう言おうと、関係ない。信じた先で、あなたに出会えたんだから』


『しんじるぅ?』


『ええ。そうよ。私はあなたのお父さんを愛しているの。あの人もまた、素直じゃないけどそう思ってくれているのよ。私の呪いを知っても、あの人は私に手を伸ばしてくれた。支えて欲しいと願ってくれた。耐えがたいことがあっても、自分を信じてついてきて欲しいって……窮屈だった私の世界を広げてくれたあの人を私は信じるの』




 遠い遠い記憶の中、靄がかかっていた記憶が晴れて眩しい光がファウラを導いていく。

 前へと進む足を止め辿り着いたその場所で、幼きファウラは母親の膝の上に頭を乗せて、当時は理解できない言葉に首を傾げていた。

 子守唄を歌う母親は、幸せそうに歌を紡いでそっとファウラの頭を撫でた。いつかきっと分かる日が来る、そう伝えるように。

 その姿を遠くから見守る父親である、国王の姿も見逃さなかった。

 知らない過去の記憶は今のファウラの背中を強く押すものになり、辛い過去を取り巻く鋭い刺が綻ぶように消えていく。



(母様……私……同じように信じて、気持ちを伝えるわ)




 白い羽と共に舞い上がって消えていく記憶にファウラは振り返ることなく、今となりを歩んでくれるひとの光へと手を伸ばす。