(ルイに嫌われたくない……でも、嘘をついていたくない……)



 自分の生まれ育った環境を話しても、冷たい視線を向けてくることもなくファウラを受け入れてくれたのだ。互いを知って行く度に、愛を注いでくれるルイゼルトになら力の事を話しても良いのではないかと考えが過ぎる。

 自分を愛してくれる人だから、自分のことを受け入れてくれるその自信さえも湧いてくる。



(なんだ……簡単に方法が見つかったじゃない……)



 ただ話したいと思うのに、先程の熱が上がり呼吸も少し乱れていた。

 体調が優れないと嘘を吐いて罰が当たったのか、本当に軽い風邪を引いていることに今更気づく。



(体調を崩すなんていつぶりかしら……)



 体調を崩した遠い記憶は、一人ぼっちで薄暗い部屋の中で苦しみに必死に耐えていた記憶しか残っていない。

 そんな暗い過去の記憶を拭き去るように、ルイゼルトが優しい温もりがこもった手でファウラの手を握り締めた。



「眠るまで傍にいる。俺のことを考えて寝ろ。どんな苦しみからも守ってやるから」


「あり、がとう……ルイ。起きたら、話したいことが……あるの……」


「ああ。大丈夫だ。俺はずっとファウラの傍にいる」



 握り締められた温もりを感じながら、寝台の端に座るルイゼルトにくっつくようにすれば安心感に包まれる。乱れた呼吸は直ぐに戻り、規則正しい寝息に変わる。

 気が付けば夢の中に落ちて行ったファウラは、まだ母親が床に伏せる前のおぼろげな記憶を見た。落ちるように深く深く。近くに居るルイゼルトの温もりが、夢の旅へと誘って行った。