ファウラのあまりの寝起きの驚きっぷりに楽しそうに笑うが、傷つけてしまうかもしれない恐怖を抱える彼女の表情は硬い。こうしている間にも影が集まって、ルイゼルトを襲ってしまったら取り返しのつかない事になる。

 どうにかして距離を取ろうとするが、好きな人に嘘を吐く勇気はない。だからと言って、近づかないで欲しいと言う言葉が言えるわけもない。

 いつもと様子がおかしいことに気付いたルイゼルトは、心配そうな表情でファウラに近づきそっと抱きしめた。



「どうした。何かあったのか」



 真剣な声で囁かれ、このまま全てを伝えてしまいたい衝動に駆られる。

 だがそうしてしまえば、嫌われてしまう恐怖に体を震わせた。



「まだ体調が回復しきってないみたいだな。驚かせるようなことをしてすまなかった。横になろう」



 違うと首を横に振りたかったが、ひょいと体を横抱きで抱き上げられ、そのまま寝台へと運ばれていく。そっと寝台に横にさせられると、何度も何度もルイゼルトはファウラの頭を撫でた。

 愛おしむ目は何処までも吸い寄せられそうな輝きを秘めている。



「あまり無理するなよ」



 額に口づけられた小さな温もりは、全身を巡ってファウラの頬を赤く染めた。