花嫁修行も粗方の終わりが見え始めたそんな頃。

 ルイゼルトの仕事の山場も大凡片付き、若干の忙しさはまだあるものの会う時間を作る余裕も出来ていた。

 今日も花嫁修業が終わり、ルイゼルトの仕事の休憩時間に会う約束をしていたファウラは、厨房を借りて香ばしい香りを漂わせる手作りクッキーを焼いて、時間を調節していた。

 シェフは自分が作りますと声を掛けたが、女心が分からない男は口出しするなとファウラの侍女達が彼の口を塞いだ。大人しくなったシェフを横に、ファウラは街で生活していた頃によく作っていた紅茶クッキーを焼きあげ、出来上がりをシェフに食べさせる。



「甘さが控えめでとても美味でございます」


「ありがとう。あなたからそう言ってもらえたら自信が着くわ」


「ファウラ様、後はこの可愛らしいリボンをお使いになって包装致しましょう!」


「手紙も添えます?」


「あはは……何だか私よりも張り切っているわね……」



 侍女達がいつの間にか用意していたあれこれを使って焼いたクッキーを包んでラッピングすれば、そろそろ約束の時間も間もなくという時間になっていた。

 手伝ってくれた侍女と厨房を貸してくれたシェフに礼を言いながら、その場を後にする。

 待ち合わせは、いつもの庭園だ。行くまでに鏡の前で髪型が崩れていないかを確認して、髪飾りに触れる。



「そうだ。今日はクッキーも焼いたし、サプライズしてみよう」



 いつも通り庭園で待っているのも少し味気がない。

 だったら直接向かうのではなく、城の回廊の方から回ってルイゼルトが来たところを後ろから声を掛ければ驚くに違いないと、ファウラはいつも行く道を遠ざかるように回廊の方へと向かう。