悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 この先も、この街で畑仕事の手伝いで汗をかき、まじないで人を笑顔にしていく未来にはもう期限が付いてしまったのだ。母親とも遂に別れを告げなくてはいけない。

 困難を共に乗り越えてきた家族と離れ離れになるのは、胸が張り裂けそうな程苦しく、悲しい。

 それでも行くと決めたからには泣く訳にはいかないのだ。



「うん。私、大国のお妃様になるよ」



 皆に、そして自分自身に言い聞かせるように、笑ってそう答えると街の住民達の瞳が煌めく。



「残りの一ヶ月、ファウラにはあれこれやってもらわないとな!」


「小屋の修理に、家畜の世話~あとは~……」


「ちょっと!ファウラにはまじないの仕事もやってもらわなきゃ困るわよ!」


「オレ達とも遊ばないと、カエル投げつけるぞっ」


「花嫁衣装もあたし達がうんと綺麗なの作ってやるから、楽しみにしてるんだよ!」


「みんな……ありがとうっ……!」



 こうして街で過ごす残りの時間を、ファウラは大切な人たちと共に過ごした。かけがえのない幸せな時間は、彼女の中で優しさが溶け込むように積もっていった。

 幸せな時間は瞬く間に過ぎて行き、やって来た旅立ちの日。

 ファウラは一輪の花が咲くように、姿見の前で花嫁衣装に身を包んでいた。王宮で貰ったドレスと比べれば、確かに質素かもしれないが、街の皆の想いが込められた花嫁衣装は、美しい輝きをファウラに灯していた。