この国を守りたいと強く願い、今一番ファウラが会いたいと願うルイゼルトの執務室。

 影は確実にルイゼルトの執務室に向かっていると判断したファウラは、残っている力を全て振り絞って影よりも速く走り前へと飛び込んだ。



「私の大切な人を傷つけさせたりしないっ……!例え、力の存在が知られたとしても!」



 突然前に出たファウラに影は対処する事も出来ないまま、彼女に余裕を与えた。祈るように両手の指を絡ませて影を帰す歌を紡げば、浄化の力が宿る。力が宿った蒼い目は、光輝き力を大きくさせていく。

 歌声に最後の抵抗をしようと動く影に、ファウラは容赦なく最後の言葉を紡ぐ。成す術なく彼女が生み出した光の中に解けて消えていった影に、安堵したあまりその場にへたり込んだ。

 周囲を見渡す限り人の気配は特にない。

 どうやら事なきを得たようで、大きく息を着く。

 ただこんな所でへたり込んでいても、返って変な目で見られるとゆっくりと立ち上がる。



「ファウラ殿下、そんなところで如何なさいましたか?」


「……!」



 立ち上がったファウラの背中に、しわがれた声が投げつけられた。