落ち込んでいた気持ちが晴れ晴れするように、綺麗な青空で輝く太陽がファウラを照らしていた。その眩しさに、目を細めれば笑みが零れていく。



「よしっ!」



 力強く頷いたファウラは、エルディンに背を向けるように歩きだす。まだ自分にはやるべき事があり、その先に待つ世界に沢山の幸せが溢れるようにするための準備を怠る訳にはいかないと地面を強く蹴った。

 馬丁達に馬の事を頼み、城へと戻る足取りは軽い。

 城へと戻る道は、青々とした木々の並木道で木漏れ日を浴びては、無性に跳ねて歩きたくもなる。人目が少ないからと言っても、エルディンのようにいつどこで自分を見ているか分からないと、その衝動は抑えるしかない。

 それ程までに、嬉しかったのだ。自分自らでは導き出せなかった答えを知れた今、ファウラの世界は大きく広がり見るもの全てが輝いて見える。

 ――ただ、ある一つを除いては。



「っ……!」



 木の陰で蠢く影に、身構えた。地を這って蠢くそれは、あの日を境に見ることが無かったせいか油断していた。

 突然襲い掛かってくるように飛び出してきた影に、両手を突き出した。



(悪しき穢れの力……じゃない。前に見た悪魔のやつと一緒だわ)



 
 一時的に浄化の力を盾替わりとして生みだし、なんとか襲ってきた影から逃れる事が出来た。

 影は再びファウラに飛びつく事もなく、方向を変えて素早い動きで走っていく。



「ダメ!そっちには人が!」



 城に向かっていく影を追い求めて、ファウラも勢いよく走り出した。