すやすやと心地よさそうな寝息を立てて眠るファウラの頬を撫でて、名残惜しそうに彼女の傍から離れたルイゼルトは静かに部屋を後にした。

 静寂な闇が支配する夜の暗がりを歩きながら、辿り着いた部屋へと迷わず入る。

 手当り次第漁った文献が散乱した部屋で、蝋燭の僅かな明かりに文字を照らし出しながら真剣な表情を浮かべるユトは、入ってきたルイゼルトに目を見開いて駆け寄ってきた。




「こんな時間にどうしたの?もしかして、ファウラ様が――」


「ユト。俺はもう我慢出来そうもない」




 心配するユトに真っ直ぐな気持ちを打ち明けた、ルイゼルトの瞳に宿る光が小さく揺れる。

 迷いでもなく、不安感でもない。瞳に揺れる光は、ルイゼルトの意思そのもの。

 ファウラと共に幸せになる道を歩みたいという強い願い。



「ファウラを利用するなんてこと、俺には出来ない。それくらい、俺は彼女に惹かれている……気が狂いそうなくらいに」



 最初は自分で敷いたレールの上を着実に歩む事だけしか考えていなかった。

 それが、初めてファウラのあの蒼い目を見た時に全てが変わったのだ。

 与えられる小さな幸せは確かなものになり、ルイゼルトの中で強く根付いた。



「それは、陛下自身の中にある感情?それとも――奥深くに眠っている君の感情?」



 ユトの静かな問いに、胸に軽く手を当て少し考えるがルイゼルトの中にある答えはただ一つ。