辿り着いた王宮内で一人、ファウラは淑女とは掛け離れた豪快な足取りで謁見の間へと向かった。

 懐かしい空間は無駄に広く、居心地が悪い。ただそんな事を思うのも今日で最後だと、国王の前でしゃんと伸ばした姿勢のまま、彼の言葉を待つ。



(さて、どう切り出してくるのかしら)



 嘘を並べてくるのは重々承知の上だ。だが予想外の嘘に、この国の未来を心配してしまう。

 第二王女が急な体調不良で自室から出てくることも辛く、他国への輿入れが出来る状態ではない為、泣く泣く今回の役目を辞退したなどという都合のいい嘘に、ファウラは笑いを堪えるのに必死だった。

 開かれた会議でどのような嘘を吐くか議論したと思うと滑稽でしかない。

 彼らの嘘を考えた時間を溝に捨てるように即座に婚約を受けることに同意すると、案の定周囲がざわめいた。この反応からして、反論して来た際の次なる嘘も用意していたに違いない。

 笑いの波が収まったところでむしり取り作戦を決行するが思いの他、あっさりと交渉は成立した。それ程までに追い出したい気持ちが強いのだと、言われなくとも分かった。

 ここに最初から自分の居場がはないことは明白なのだから。