ファウラが気づいた頃には、外はもう夜に染まっていた。濡れていたドレスも、冷えた体の感覚も何処にもない。

 寝台の柔らかいシーツの感覚に、泣き疲れて寝てしまったのだと理解する。




「髪飾りっ……!」




 昼間の記憶が蘇り、寝台から起き上がって大切な人から貰った髪飾りの姿を探す。ただ、手に触れたシーツとは異なる質感がここに居ると呼びかけてきた。

 枕元に置かれた髪飾りを手に取って、きゅっと抱きしめる。ちゃんと自分の手元の中にある事が嬉しくて、安堵の息を零した。

 すると部屋の扉が開かれ、入ってきたルイゼルトが少し心配そうな表情を浮かべてファウラの元へとやって来た。



「すまない。起きた時に傍に居なくて」


「陛下……心配掛けてごめんなさい」


「ああ。まったくその通りだ。会議の帰りに迎えに行ってみたら、あんなことになってると誰が想像出来ると思ってんだ」



 怒りを露わにしてファウラの隣に座るように寝台の端に座り込んだルイゼルトは、いつもよりいくつばか雰囲気の冷たい空気を放つ。これ以上口を開いて、彼を怒らせたくはないと口を噤んだ。