「エド。私はあの街や皆が大好きよ。だからこそ私の居場所を汚すような真似は絶対にさせない」


「それが特典?」


「ええ。ついでにこの領地の民があんな薄汚れた大人達にお金を払うのも嫌なのよ。王家に納める税も若干の免除もむしりとってくるわ。怯える相手の所に嫁ぐ人間が居れば、戦はないんだから資金を軍事力に回さなくてもいいはずでしょう?」


「ホントに、ファウラったらそんな悪いこと何処で覚える暇があったのさ」


「おじ様とほんの少し会話しただけ」


「父さんか……」


 大きくがっくりと肩を落とすエドガーに思わず笑うと、勝ち目はないと判断した彼が静かにファウラの手を慈しむように撫でた。

 その指の動きは、いつにも増して優しい。

 こんなに誰かに優しくされる未来がやってきたのだ。一度は神に見放されたが、これから先の未来は目が離せないような幸せを掴み取ってみせると、誓うようにエドガーの手を強く握り締めた。



「必ず幸せになって」


「うん。約束する」



 窓の外に見えてきた王宮を前に、負けて堪るものかとファウラは強く頷いたのだった。