どうして松木さん達にあんな話をしたのか、ようやく分かりましたよ。

おそらくそれは、私を守るために。
松木さん達にわざとオカルトトークをしてドン引きさせ、自分に興味を失くさせたのでしょう。
葉月君、案外優しいところもありますから。

今頃教室で松木さん達は葉月君のことを、「いくらなんでもないわー」と言ってるのではないでしょうか。

「で、でも良かったんですか? 松木さん美人ですし、勿体無かったんじゃ」
「だーかーら! 俺はトモの方が良いって言ってるの。トモが鈍感なのは昔からだけどさ、少しは俺の気持ちにも気づいてよね」

機嫌を損ねてしまったのか、プイとそっぽを向く葉月君。
な、何か間違ったことを言ってしまったのでしょうか?

けど考えても、彼がどうしてへそを曲げたのか、よく分かりません。
こういう時、なんて言えば良いのでしょう? なんて言えば……。

「あ、こんなところにいた! 知世ー、葉月くーん!」

ふにゃあっ!?

頭の中がグチャグチャになる中、急に名前を呼ばれて思わず体をビクつかせる。

慌てて声のした方を見ると、廊下の向こうで椎名さんが手を振っていました。

「邪魔が入っちゃったか」

葉月君は掴んでいた手を放して。解放された私は、ホッと息をつきます。

は、恥ずかしかったー。
あれ、けど不思議と少し残念な気がするのはなぜでしょう?

けど、それよりも今は椎名さんです。
彼女は足早に、私達の側に寄ってきます。

「探したよ。スマホに連絡したの、気づいてなかった?」
「そうだったんですか? ごめんなさい、ちょっと取り込んでて」
「まあ良いけど。あのさ、実は知世と葉月君に、相談したいことがあるの。祓い屋として、二人の意見を聞きたいんだけど」

祓い屋として、ですか?

思わず葉月君と顔を見合わせる。
それって、霊絡みの相談ってことですか?

松木さん達の件はどうにかなりましたけど。
どうやら私達に、安息の時はなさそうです。