「…ぼく、はなちゃんとけっこんしたいなあ」



いつも私の後ろに隠れてメソメソ顔をしていた。人と話すことが苦手で、彼の中の一番は私で。私だけが彼のすべてだったらしい。



そんな典型的引っ込み思案な彼がある時ふにゃりと微笑んでそう言った。




「いいよ!ひびとのこと、ずーっとまもってあげる!」




小さい頃の小さな思い出。確か、彼の手には綺麗なたんぽぽ。




だけれど、こんな約束は子供の遊びだ。深い意味なんてきっと…絶対にない。




高校に上がってふとこの日を思い出した時、あの頃は可愛かったなんて頬をゆるめる出来事に過ぎなかった。




…そう。遠く離れた小さい頃の話だったのに。






「―――好き。花(はな)が好きだよ」



「……ひ、日比人(ひびと)?何言ってるのもう…挨拶はおはようだよ」



「違う、冗談じゃないから。結婚するっていった」





十年後、私に告白したのは花束をもった彼でした。