命を奪われるとわかった時よりも、大好きな歌を奪われたことのほうが悲しくてつらい。

 多くを譲ってきたのに、どうして私ばかり奪われなければならなかったんだろう?

「凜ちゃん!」

 目を閉じると、姉が悲鳴に似た声をあげた。

 彼女に悪気はなかったはずなのだ。転びそうになったから私の服を掴んだだけ。

 階段の横にある手すりよりも、私のほうが彼女にとって信用できるものだったから掴んだのだろう。

 きっと、望んで私の命(もの)を奪おうとしたわけではない。

 こんなふうに考えるのは、『しょうがないでしょ』という言葉に縛られているからだろう。