そしてついに私は、高校二年生の秋に命まで奪われてしまった。



「大丈夫か! 君!」

 切羽詰まった男性の声が遠くて、ひどく頭がぼんやりする。

 声を出そうとしたのに、喉からはガスが漏れるようなしゅうしゅうという耳障りな音しかしなかった。

 ──もう、歌も歌えないんだ。

 小さい頃から歌が好きで、小中高とずっと合唱をやってきた。

 声楽家を目指して音大に行く準備もしていたのに、声が出ないならその夢ももう終わりだ。

「凜ちゃん、大丈夫?」

 おろおろ慌てふためく姉の声が聞こえ、また笑おうとして涙がこぼれた。