魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました

 そう言いながらも、ノインは私の手を振りほどかなかった。

 それどころか、逆に私の手を両手ですっぽり覆う。

「おまえがいなければ、好きなように自分の時間を過ごせた。ひどい料理だって食わずに済んだだろうな。大事な素材だって馬鹿みたいに減るようになったし、今みたいに困らせられることもなかった。でも……」

 ノインはひと息で言ってから、一瞬言葉を詰まらせる。

「僕はもう、おまえがいなかった頃の生活を思い出せないんだ」

 青紫の瞳に捉えられて、とくんと心臓が音を立てた。

 触れ合っている場所が急に熱くなった気がする。