ふわっと身体が軽くなって、空を飛んだのかなあなんて呑気に考えた。

 時間の流れがおかしくなったみたいに、世界がゆっくり動いている。

 別に笑えるようなことじゃないのに笑ってしまったからか、背中に走った強い衝撃もあまり痛いと感じなかった。

「おい! 女の子が階段から落ちたぞ!」

「救急車呼べ、救急車!」

 見知らぬ誰かの叫び声や悲鳴は、びっくりするぐらいはっきり響いている。

「凜(りん)! 凜ちゃん!」

 階段で足を踏み外した姉は、支えを求めて私の服を掴んだのだ。

 姉が体勢を立て直した代わりに、今度は私が足を滑らせて、長い階段から地面へと落下した。