「これで安心ね。公務のことはジャネット様がいてくれるし、後宮のことはポリーに頼めるもの」
「フィオナ様は、安心して健やかなお子様を産んでくださいね！」
ポリーに元気よく言われ、フィオナもお腹を撫でながら微笑む。
「そうね。楽しみだわ。オリバーにアイラ。ポリーの子供たち。たくさんのお兄ちゃんやお姉ちゃんに囲まれて過ごすんだもの。この子もきっと、出てくるのを楽しみにしているわね」
それから三日後。フィオナは産気づき、後宮は一気にあわただしくなる。
「今回は氷漬けにならなさそうね」
「ちょっと怖かったわよね。あの時」
後宮のメイドたちのひそひそ話に、「とはいえ気を抜くなよ」と声をかけてきたのはオスニエルだ。
「へ、陛下！」
「フィオナに何かあれば、俺もまともじゃいられないからな」
「はいっ！ もちろんです！」
オスニエルは、その日の執務のうち火急のものだけを片付け、後宮へと帰って来た。
「あ、お父様！」
母の苦しむ姿に、アイラは涙目だ。
「すごく痛そうなの。出産ってみんなああなの？」
「母上が……」
双子はオスニエルの姿を見るなりすがってくる。
「ああ。そうだ。お前たちの時もこうだったんだ。それでも母様は、お前たちを生み出したくて頑張ってくれた。今回も大丈夫だよ。祈っていてやってくれ」
そう慰めたものの、オスニエルも出産の間だけは落ち着かない。
男の身ではどうすることもできない。ただ、フィオナが頑張っているのを眺めるだけの役立たずだ。
「そうだ！」
オリバーはポケットからしおりのようなものを取り出した。
「これ、マーゴットが、僕が休んでいた時にくれたんだ。幸運のお守りだっていうし、これにみんなで祈ろうよ」
「四つ葉ね。わかったわ。お父様も」
「ああ」
みんなで祈り、力を込める。一緒に祈るだけで、不安がまぎれていくのが分かった。
ドルフもリーフェもいつの間にか集まり、みんな揃って祈っていると、不思議な一体感に包まれる。
長い時間が経過し、アイラもオリバーもだんだんぼうっとしてきた。
