うましか


 いつから付き合っていたのだろう。同じ教室の中で毎日生活していたのに、全く気付かなかった。告白はどちらからだったのだろう。彼は岡崎さんのどこを、岡崎さんは彼のどこを好きになったのだろう。

 ただひとつはっきりと分かっているのは、出会ってから八ヶ月、わたしがぐずぐずして、たった五回の会話で満足している間に、彼らはちゃんと友情や愛情を育んでいたということだ。

 身体中の血が冷え、全ての細胞が活動を止めてしまったのかと錯覚するくらい寒くって、脱いだばかりのコートを着直した。指先が震え、うまくペンを握れず、何度も取り落とした。スズに心配され、予定よりずっと早くに勉強を切り上げ、真冬の屋外に出ると、ようやく体温が戻ってきた。

 暖房のきいた室内で震え、真冬の屋外で暖を取るほどの動揺。こんな風になったことは今までなかった。小学生の頃の初恋も、ある日突然訪れたファーストキスも、部活の先輩への片想いも、中学三年生で初めてできた彼氏との日々も、その日々が高校受験を機に終わってしまったときも、こうはならなかった。

 まだまだ知らないことばかりでも、彼のことが好きだった。それこそ、身体がエラーを起こしてしまうくらい。
 でも終わりだ。彼はもう恋人がいる。終わりなのだ。