そう言われ、大きな屋敷に連れて来られ、アイラは戸惑ってばかりだった。それと同時に、もう孤児院の仲間たちに会えないことを悟り、毎日泣いてばかりだった。

だが、父親となった男はアイラをジュリエットにするべく必死になっていた。孤児院育ちのために文字からまともに読み書きできないアイラに家庭教師をつけ、勉強と礼儀作法を叩き込んでいく。

毎日何時間も行われる厳しい勉強と礼儀作法の指導に、アイラはいつも泣いていた。忙しい使用人たちは、その様子を見て見ぬふりをして歩いていく。

(……ここには、私の味方なんて誰もいないんだ)

アイラが俯きながらグッと唇を噛み締めた時、フッと影が落ちる。顔を上げれば、白い髪の執事ーーーノエがいた。

「大丈夫ですか?お嬢様」

そう心配そうに声をかけられた刹那、この屋敷に来てから色褪せていたアイラの日常に色がつき始めたのだ。