アメリアの今の目標は、今まで治癒魔法しかなかった水魔法をもっと増やすことだ。サルジュは色々と相談に乗ってくれるが、彼の専門は土魔法である。だから水魔法の研究はアメリアが主体で行っていた。
「そろそろ閉校時間ですよ」
 あれからずっと集中していたらしく、カイドにそう言われて我に返った。
 少し前に研究所から戻ってきたサルジュは、珍しいことにもう片付けを始めている。
 アメリアも慌てて帰り支度をした。
 迎えの馬車の前でカイドと別れ、王城に向けて走り出した途端に、サルジュが馬車を止めた。
「サルジュ様?」
「書類を忘れたようだ。取りに行ってくる」
「私も一緒に行きます」
 いくらすぐ近くとはいえ、サルジュひとりで行かせるわけにはいかないと、慌ててアメリアも立ち上がる。
 学園に戻った馬車を門の前に待たせて、ふたりで図書室に戻ろうとした。けれどサルジュはアメリアの手を引くと、そのまま裏門の方に向かう。
「あの、どちらに?」
 戸惑いながらも、サルジュが手を放してくれないから立ち止まることもできず、アメリアはそのまま彼の後について歩くしかなかった。