婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 視察が終わったらレニア領に来るユリウスとはここで別れ、アメリアはサルジュとマリーエとともに馬車に乗り込む。
 目的地はもうすぐだ。
 夏だというのに、馬車に乗り込むときに吹いていた風は少し冷たく感じた。
 空を見上げると灰色の雲に覆われていて、今にも雨が降りそうだ。
 去年の天候を思い出しながら、今年も暑い夏にはなりそうにない、と考える。
 子どもの頃の夏はあまりにも暑くて、手伝うといいながら水浴びばかりして叱られたものだ。
 けれど最近は雨が多く、水遣りをしなければならない日は少なかった。アメリアも冷害に強い新品種の小麦が作られるまでは、毎日晴れの日を待ちわびて、朝になるとすぐにカーテンを開けて空を確認していた。
 虫害は厄介だが、人の手を使えばどうにでもなる。天候だけは、どんな魔法を使ってもどうしようもない。