婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 あのときはまだ、名前も身分も知らなかった。
 想いを自覚したのは、随分後になってから。
 けれど、誰も信じられなくなりそうな絶望から救ってくれたのは彼で、その度に思いが募っていた。
「水魔法の開発、頑張ります。サルジュ様の傍にいられるように、手伝いではなく共同開発者として、名を残せるように」
 顔を上げ、はっきりとそう告げる。
 決意であり、誓いの言葉を。
「そうだな。ふたりで頑張っていこう。これから先、ずっと一緒に過ごせるように」
 誓いの証のように、サルジュの唇がアメリアの手の甲に触れる。
 それだけで真っ赤になって俯くアメリアを、彼は愛しそうに見つめていた。
「ああ、でも今日は休みだったね」
「はい。サルジュ様はお休みの日です」
 アメリアは当初の目的を思い出して、大きく頷く。
 彼の手を取って走り出したときは、まさかこんなことになるなんて思わなかった。