黙ったまま、ただ困惑しているだけの彼を前にして。 どう接したらいいのか、分からなくて……。 あたしは、仕事だと嘘をつき、慌ててゲーセンを出て行った。 はじめて彼の名前を知った。 ――増永……弘樹。 あたしは沙織みたいに、「ヒロくん」なんて呼べないけれど。 今はそれだけでじゅうぶんだよ。