side紅


長く短い夏休みがあっという間に終わった。
特に目立つこともなく、過ぎていった夏。

私に起きた唯一のハプニングといえば、一時帰省中、さっさと帰ろうしたが、何と帰省のタイミングで夏風邪を引いてしまい、あんなにも長居したくないと思っていた実家に一泊もしてしまったことくらいだ。

熱が下がり次第、さっさと帰ろうとした私に父が「まだ居ればいいだろう。夏休みなのだから」と言ってなかなか学校へ帰そうとしなかった時は頭でもおかしくなったのかと思った。
母は少しだけ私のお見舞いに来てくれたくらいで通常通りだったのに。
朱は毎度のことながら私に張り付いてずっと看病してくれていた。

そしてあっという間に夏休みが終わり、二学期が始まった。

私は次の授業を受ける為に廊下を1人で移動していた。
いつも一緒にいる武は今日は任務なのでいない。
姫巫女も今回の授業は能力者の専門学なので他の教室にいる。護衛のお気に入りの蒼と。



「あ、紅様だ」

「聞いたか?紅様って由衣ちゃんと仲が悪いらしいぜ」

「海の外出が中止になったのも紅様が原因らしい」

「由衣ちゃん泣いてたよな」



廊下を歩く私を見て生徒たちが私に聞こえるか聞こえないかギリギリの声でいろいろなことを言っている。
夏休みが明けて二学期が始まると何故か1度目と同じような状況ができてしまっていた。

周りから有る事無い事を言われるようになっていたのだ。
しかもまるで私が悪いかのような話ばかり。



「…」



私の話をしている生徒たちを一瞥すると生徒たちは気まずそうに口を閉じる。
まだその様子から1度目の時のように私を攻撃してやろうとする気配は見当たらない。

1度目の時はこの感じがエスカレートしていって、最終的には私に直接悪口を言う生徒が多くいた。