「…僕が紅を守るから」
「え」
ポツリと思ったことを口にする。
すると僕の言葉が聞こえたのか、はたまた聞こえていないのか、どちらとも受け取れる表情を紅は浮かべていた。
困惑しているような表情だ。
この世の脅威は妖だけではない。
自然、機械、人間。様々なものが誰かの脅威になっている。
僕にはとある記憶がある。
紅を殺してしまった記憶だ。
僕は思い出したくもないあの日のことを頭に思い浮かべた。
*****
紅は姫巫女…由衣に許し難い行いを繰り返した。
由衣を泣かせた。由衣に危害を加えた。
守るべき対象をあらゆる手段で攻撃し続けていたのだ。
だから紅は葉月家を破門になり、能力者界から追放された。
その後、紅はどうなったのか。
紅は何と妖側に付いたのだ。
恩を仇で返すとはこのことだ。
追放されたとはいえ、自分を育ててくれた能力者界、ましては人間の敵に堕ちてしまうとは。
由衣には姫巫女として大厄災を封印するだけではなく、不思議な能力がある。
その一つとして由衣に導かれたとある山奥の屋敷の中に僕たちの目的、大厄災がいた。
僕たちは今日、ここで大厄災の封印を再度施す。
「人間風情が。どんなに集まろうと所詮お前らなど相手にもならない」
守護者の僕たちと姫巫女の由衣をまるでゴミを見るような目で大厄災が見つめる。
灰色の長髪を靡かせ、佇む姿を見ただけて大厄災の強さを痛いほど感じてしまった。
そして何よりも強者が大厄災だけではないことが大きな問題となって僕たちに立ちはだかった。
あちらには麟太郎様に並ぶ…いや、麟太郎様よりも上をいくかもしれない人類最強の能力者、紅もいるからだ。



