今から内緒の話をするから耳塞いで?実はわたし、未来から来たの。もうすぐ貴方は捕まり、拷問され、火事の混乱に乗じて処刑される。わたしは貴女を助けたい。こんなに誰かを好きになったことはないから。きっとこれは大事にしなきゃいけない恋なの。だから歴史を変える。わたしの人生を賭けて。



今から内緒の話をするから耳塞いで?実は私、人間じゃなく天使なの。私はもうすぐ駐在任務を終えて向こうに戻る。次に会えるのは、貴方が天寿を全うして向こうに旅立ってから。待ってるよ。天使の寿命は長いの。数十年後も今と変わらぬ姿で再会できる。誓うよ。必ず会いに行く。



今から内緒の話をするから耳塞いで?塞いだ?もう聞こえてない?あのね、わたし実はきみのことが好きなの。それでそろそろいい加減、友だちの枠から外れたいなって。だから明日からアプローチしていくから。きみは察しが良いから、その違和感に気付くかもしれない。気付いたら、答えをちょうだいね。



じゃあ僕も、今から内緒の話をするから耳塞いで?実は僕、きみの恋人の双子の兄なんだ。弟はきみと別れたがっていて、でも奔放なきみが留まっているのだから、振るのは可哀想だって、僕が代役になった。でもきみは聞いていた話と違うね。素直で優しくて……代役の務めを忘れてしまいそうだよ。



今から内緒の話をするから耳塞いで?実はわたし、あなたの恋人の双子の妹なの。姉は奔放な人だから、今は別の人と暮らしてる。でもあなたの元に戻る気はあるらしいから、わたしはそれまでの代役。大丈夫、あなたを好きになったりしないよ。代役は代役らしく、静かに隣にいるだけよ。それだけよ……。



聞いてほしい、でも聞かせられない。聞かせない、でも話してすっきりしたい。これはわたしの我が儘だから。あなたが耳を塞いでいる間にわたしが話したことは、明日になったら忘れていい。忘れてほしい。これもわたしの我が儘だ。