神様、この恋をよろしくお願いします。

本郷先生が逃げるかのように出て行った進路指導室はあたしと委員長といっちゃん、悠と悠のお父さんという不思議な空間ができてしまった。

あたしここにいていいの?

あたしも出ていくべきだったかな?

でも委員長もいるし、出ていくタイミング失っちゃったっていうか…

「なんでもっと早く言わないんだ!」

今度は悠のお父さんの怒鳴る声が響いた。

さっきまであんなにクールに喋ってたのに、そんな声も出るんだってビックリしちゃった。

悠のことをキッと睨むように、その視線がますますあたしの場違いを感じさせる。

「俺のことなんかどーでもいいくせに」

フンッとわざとそっぽ向くような仕草を見せ、顔をそむけた。

「瞳や髪はともかく、素行が悪いのは先生のおっしゃる通りだからな!もっと勉学に励め!!」

それは確かに、おっしゃる通り。

これにはいっちゃんも苦笑いしてる。

てゆーかお父さんは空気だって言ってたけど全然そうは感じなくて、聞いていた話よりだいぶ違和感だった。

「どうしていつもそうなんだ、大事なことは言わない!」

…それも、そうだよね。

でも言わないんじゃないんだよ、言えないんだよ。

わかってあげてよ、お父さんなら。

わかってあげて…

「…本当は真菜と暮らしたいならそう言えばいい」



「「え?」」



ちなみにこれはあたしと委員長の声。

なぜかあたしたちの声がハモっちゃった。

だってそれは想定外過ぎたから。

気付いてないお父さんはどんどん話を進めていく。

「真菜といては悠が傷付くだけかと思っていたけが、母親と一緒にいたいと思うのは当然のことだ。悠がそうしたいと思うなら、…出て行ってもいい」

何かを悟ったかのように、悠のお父さんはそっぽ向く悠の方を見つめていた。

その瞬間、カンッと跳ね返って来た。

「思ってねぇよそんなこと!それはお前が俺のこと邪魔だと思ってるからだろ!?」

やっと悠とお父さんが目を合わせた。

「そんなわけないだろっ!」

「ふざけんなよ!テキトーなこと言ってんじゃねぇよ、今までどんだけ無視して来たんだよ!」

「それは何も言わないからだろ!いっつも何も言わないからこっちは心配してたんだぞっ!!!」

「何がっ」

「落ち着いてください…っ!」

言い合う2人の中にいっちゃんがスッと手を出して止めに入った。

「まぁまぁ、落ち着いて。お父さんもそんな熱くならず」

「…申し訳ないです」

悠のお父さんをなだめ、ぽんっと悠の肩を叩いた。

「今日は一度帰って、お父さんと話すのがいいんじゃないかな。きっと今まで知らなかったこともあると思うよ」

いっちゃんはちょっと頼りないなんて思ってたけど、やっぱり先生だね。

すっごく頼りになる。

それに、いっちゃんの笑顔を見ればみんな癒されるから、いっちゃんが担任の先生でよかったよね。

「宝条さんも並木くんも、朝の階始まるから教室に戻って」