「相沢と付き合ってるの!?」

ナナの大きな声が階段中に響いた。

教室だと話しずらいと思ってここまで来たのにあんまり意味なかったかもしれない。座りながら話してるけど立ち上がりそうな勢いだった。

「つ、付き合って…はないから!」

「でも告白したんでしょ?」

「告白って言うか、好きって言っただけで…」

そんな約束はしてない…と思う。

好きって言うだけ言ったら満足しちゃって他に何言えばいいのかわからなかったから。

「相沢からは?何も言われてないの?」

「うん、特には」

「好きって言った返事とかないの!?」

「返事はないけど…き、キスはしたっ」

「キスっ!!??」

さっきよりまた大きな声が響いた。 
隣の隣の階段ぐらいじゃダメだったかもしれない、体育館裏ぐらいまで行くべきだったかも。

てゆーか恥ずかしいのにそんな大声で言わないで!

「だから…っ、付き合ってるのかもしれないしそうじゃないかもしれないし…よくわからないっていうか」

このむずむずする気持ちを隠したくて両手の人差し指と人差し指を合わせてじっと見ていたあたしにナナがはぁっと大きく息を吐いた。

「小夏…、それ遊ばれてるよ」

「え?」

「付き合う約束もしてないのに先に手出すとか最悪じゃん!」

「手出すってそんなんじゃないって!」

「そうだよ!」

なぜかあたしよりナナはご立腹でグッと唇を噛んでいた。

もう一度息を吐いて、長いストレートの髪を掻き上げ耳にかけた。

「相沢はやめなよ、絶対後悔する」

「………。」

「絶対やめた方がいい」

「…ナナが思ってるような人じゃないよ、誤解してることたくさんあると思うし」

青い瞳だってキラキラの髪だって、怖い先輩のことだって、知ればそんなこと思わない。

あたしは今諦めることの方が後悔すると思う。

「…わかった」

「ナナっ」

うだうだしてるあたしにナナが大きく息を吐いた。

「じゃあまず本当に付き合ってるかどうか確認してからね!」

「…うんっ」