翌日。

私立CC女子高等学校。

1年2組の教室。

朝のホームルームが始まる前。

私は山川さんと向かい合って座っている。



窓の外はザーザーと音を立てて、雨が降っている。

電気を点けていても、なんとなく薄暗い室内。



「で?」



山川さんは心配そうな顔で私に聞いた。



「そのカレは、『美鳥』のことを津山さんだって、わかっていそうなの?」

「それは、わかりません。『美鳥』と名乗っちゃった時は怖くて、徹平くんのことを見られなくて」



私の返事に「どうしたもんかなぁ」と、山川さんは頭を掻いた。



「メイクしてキレイになって自信がついたらさー、そのカレ、徹平くんだっけ?……その徹平くんに、告白できるといいねって話だったじゃん?」



無言でうなずく私に山川さんは、
「でも偽名っていうか、架空のさー、存在しない人になっちゃったらさー、津山さん自身が告白できないじゃん」
と言って、
「メイクした津山さんは、架空女子の『美鳥』になっちゃうんだもんね?」
と、ため息を吐いた。