ガタリと背後で音がした。

振り向くと、真っ青な顔をしたガクが部屋の入り口に立っていた。

「ガク?」

僕は訝しげにガクを見上げた。それほどガクの様子はおかしかった。

「レイ」

ガクが譫言のように呟いた。膝が震え、唇がわなないていた。

「ガ……」

「何やってんのよあんた!」

少女の言葉を遮って、ガクが弾けたようにレイに駆け寄った。

ふと背中に生暖かいものを感じた。

レイの腕がだらりと垂れた。その腕が、驚くほど真っ赤に染まっていた。

「――レイッ!」

「どけよ!」

目を見開いた僕を押しのけ、ガクが懸命に少女の肩を揺すった。

「レイ!……レイッ!!」

少女はにこやかな笑みを浮かべ、嬉しそうにガクの手を握りかえした。