「栞!」

 そんな声で我に返る。

「……えっ?」

 急に名前を呼ばれるなんて思わなかったから反応が遅れてしまった。

「ど、どうしたの?」

 さっきまでぼーっとしてたから、もしかして呼んでくれたのかな?

 それとも私に用があって……?

 どちらにせよ、とりあえず気になったからそう聞いてみる。

 私が尋ねると、和向君が私の顔を覗き込みながらこう言ってきた。

「しーちゃんさっきからすごくぼんやりしてるよ~。考え事してたの~?」

 ……確かに、そうかもしれない。

 自分の行動を振り返って考える。

 考えないようにしていたはずなのに、はっと我に帰ると邪気や魔力のことしか頭になかった……今更ながら気付いた。

「う、うん。ちょっとね……。」

 あながち考え事というのは間違っていないから、あははと笑いながら返す。

「大丈夫か?」

 そう言ったのに、何故か心配されてしまった。

 心配する要素なんてあったかな……?

「なんかずっと顔しかめてたから……本当に何考えてたんだ?」

 そ、そんな顔してたかな……私。

 自分でも気付かないほど考え込んでいた、とか?