なんて、様々声が飛び交っている。

「ほんとだったね~、噂。」

 和向が振り向いて小さな声で俺にそう言ってくる。

「あぁ、そうみたいだな。」

 まさか、本当だったなんてな……。正直、信じられないが。

「柊木さん、入ってきて。」

 その兄貴の言葉で入ってきた編入生。

 今の時代に似合わない校則通りの服装。黒く長い髪。大きな丸眼鏡。

 一言で言うならば……地味子だ。

「うわっ、地味じゃん。」

「どうして人間がっ!」

 そんな声がちらほら聞こえる。

 まぁ、そうだろうな。

 編入生なんて異例中の異例だし、あいつは見るからに人間。

 さらに地味子となれば、誰でも否定的な言葉を並べるはずだ。

 ……そんな事をするのは、ダサいけど。

「自己紹介をお願いするよ、柊木さん。」

 兄貴の言葉に頷いて、編入生が丁寧に自己紹介をした。

「柊木栞です。よろしくお願いします。」

 そう言ってお辞儀をした編入生。

 栞、か……。

「柊木さんの席はあそこだよ。」

 うわ、席が近いな。

 俺はこっそりと心の中で願う。

 どうかあいつが猫撫で声で喋ってきたり、媚び売ってくるような女じゃありませんように……と。