「…………黒幕?」

 意味が分からなくて、その言葉を反芻する。

 いじめの黒幕ってことは……裏で動かしていたのはこの人?だよね。

 私の呟きに大きく頷いて、また笑みを見せる彼。

「うん、僕が君を探してたんだ。まぁ分かってたけど……本当に人間だったとはね。」

 み、見られるのは慣れてないっ……。

 じろじろと凝視してくる彼に、縮こまりながらも私は強く言い返した。

「あの……何で私を探してたんですか……?」

 わざわざ人を探すって事はきっと、何か用があるからに違いない。

 だけどいったい何の用?と怪訝に思い、私は疑問を投げた。

 目の前の彼は私の言葉を聞いて、小さく息を吐く。

 その行動が……おかしなものだった。

 まるでこの状況を楽しむような、面白がるような……そんな愉快そうな雰囲気を纏っている。

 何だか、嫌な予感が……。

 最近のいじめのおかげで鍛えられた勘と警戒心により、早めに気付く事が出来た。

 ……逃げるなら、今しかない……!

 私は体に力を入れて、彼の横を通り過ぎようと動いた……けれど。