「眠ったか……。」

 規則正しい寝息を立て、俺の腕の中で眠ってしまった栞。

 その姿に頬がだらしなく緩む。

 というか、自分から言ったがこんなにすぐに眠るとは……警戒心がなさすぎる。

 ……すっげー可愛い。

 最近栞といる時間が増えて、次第にそう思う事が増えた。

 今まで他人に可愛いだなんて思わなかったが、栞だけは特別だと感じるようになった。

 栞はそんな俺の気も知らず、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

「俺以外の男に、こんな事するなよ。」

 聞こえていないだろうが、ついそう言ってしまう。

 他の男にこんな事したら、相手を殺したくなる。

 ……ん? 何故こんなに嫌な気になるんだ?

 その意味は分からないが、そう考えだすと黒い感情が俺の中でうごめきだす。

 そんな気持ちを吐き出すように、はぁ……と軽く息を吐いた。

 栞は相変わらず、可愛い寝顔をして眠り続けている。

 寝やすいようにいわゆるお姫様抱っこ……というやつで栞を抱き上げ、どうするかを考える。

 このまま栞を寝かせておいてあげたいが、そうすれば栞が家に帰れない。