恋がはじまる日

 やっぱりそうなんだ。好きな子いるんだ。


「俺の気持ちを伝えようとも思ってる。そりゃゆくゆくは付き合えたら嬉しい。でも一緒にいられるだけで幸せっつーか…。それだけじゃだめなのもわかってるんだけど……。超照れるな……。てか美音、その顔なに?」

「えっ!顔?私変な顔してた?」


 普通に話を聞いていると自分では思っていたのだが、どうやら彼の恋バナにきゅんきゅんしてしまっていたようで、多少変な笑顔になっていたかもしれない。


「ごめんごめん、嬉しくって!椿とこういう恋の話って、したことがなかったから。私達ももう高校生だもんね。…そっかぁ、椿は恋を知ってるんだね」

 ずっと一緒に過ごしてきたけれど、知らないうちに彼は恋をしていたんだなぁ。なんだか少し寂しいような…。


「藤宮くんともそういう話はするの?」

「はぁ!?なんで藤宮と!?」

「仲良しなのかな、って思ってたんだけど」


 そう言うと椿はものすごく嫌悪感たっぷりというような表情を見せた。


「仲いいわけないし!美音はどこをどう見たら俺と藤宮が仲良しに見えるんだよ」

「一緒にいるとこよく見る気がして」

「それはこっちのセリフだっつの。美音もよく一緒にいるじゃん」

「そうかな?」


 でも確かに春に出会った頃より、すごく話しやすくなった。ときどきからかわれたりはするけれど、優しいし、私のこといつも気遣ってくれてる。


「さっきだって二人でいたし。あんまりあいつと二人きりになるなよな。危ないだろ」

「また椿は心配しすぎなんだから」


 私は再びキャンプファイヤーの火に視線を戻す。