恋がはじまる日

「椿、」

「ん?」

「恋してる?」


 そう直球で聞いてみると、椿はこっちが驚くくらいに大声を上げた。


「なっ!えっ!はぁ!?」

「び、びっくりしたぁ、そんなに驚かなくても!」


 と言うか、この驚き方はすでに答えているようなものなのでは…?

 椿は顔を真っ赤にしていたが、こほんっと一つ咳払いをして、努めて冷静を装って言う。


「み、美音、なんでそんなこと聞いてきたの?」

「えっと、椿に好きな人がいるんじゃないかなぁ、と思ったわけではなくてね。文化祭って、みんな好きな子とまわったり、気になる人を誘ったりするじゃない?私を誘ってくれたけど、よかったのかな、ってちょっと思ってて。それで、恋バナとかしたことなかったなぁ、って思ったから聞いてみた」


 そう素直に返答すると、椿は「そ、そっか」と呟いた。


 彼は少し間を置いて、呼吸を整えると、


「えっと、好きな子はいるよ」

とはっきりと答えた。