恋がはじまる日

 校庭ではもう火がついたキャンプファイヤーの周りに生徒達が集まっていた。みんな賑やかに談笑したり、歌ったり踊ったりしている。男女の組み合わせも多く、みんな恋人同士なのかな?、楽しそうな笑顔で溢れていた。

 キャンプファイヤーから少し離れたところに、私と椿は腰を下ろした。


「綺麗だな」

 椿が火を見ながら呟く。


「うん、綺麗」


 私も煌々と燃えさかるキャンプファイヤーを眺める。ぱちぱちと音を立てながら、薄暗くなり始めた校庭を照らしている。なんだかとても穏やかな気持ちになる。

 火を眺めながら辺りを少し見回したけれど、やはり藤宮くんは来ていないようだった。


 椿が寂しそうに呟いた。


「文化祭ももう終わりかー」

「あっという間だったね」

「今年の文化祭もすげー楽しかった!パスタ屋さんも大盛況だったし、美音と一緒に過ごせたし!ま、美音途中で消えたりもしたけどな…」

「う、勘違いしてごめん…。って私とはいつも一緒に過ごしてるじゃん」

「まぁ、そうだけど!いいんだよ、美音と一緒が一番楽しいんだからさ」

「うん、ふふありがとう」


 一瞬の逡巡の後、幼なじみの彼に遠慮するのもなんだか変な感じがして、私は素直に聞いてみることにした。なんでも話してほしいって、以前椿も言っていたし。

 私は少し居住まいを正す。