恋がはじまる日

「……」

 …一人になっちゃった。これからどうしようかな…。菅原先輩のクラス、なにやってたっけ。覗いてみようかな。

 とりあえずふらっと歩いてみることにしたところで、曲がり角から出てくる人にぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさっ」

「また佐藤か」

「あ、藤宮くん!」


 曲がり角から出てきたのは、藤宮くんだった。呆れたような表情をされてしまう。


「相変わらずそそっかしいな、ちゃんと周り見てるのか?」

「ご、ごめん」


 藤宮くんとはこういう会話ばかりしている気がする。私ってやっぱりそそっかしいのかなぁ…。


 藤宮くんも模擬店のシフトは昨日で終わっているはずなので、今日は一日クラスの仕事はないはず。文化祭を回っていたのだろうか。


 …誰と?

 誰かと文化祭まわってたんだよね、きっと。誘う女の子は結構いそうだし…。
 ああ、昨日もそんなことを考えて、なんだか嫌な気持ちになったんだよね。なんなんだろう、このもやっとする感じ。


 藤宮くんはどんな女の子と文化祭を見てまわったの?


「一人か?」

「え、う、うん」

 私が答えると藤宮くんは不思議そうな顔をした。


「藤宮くんは、えっと、誰かと文化祭まわった?」


 彼の表情を窺いながら、少し勇気を出して問いかけてみた。しかし彼は首を横に振る。


「いや、俺は委員会の当番があったから」

「委員会?」


 文化祭の日に委員会?こんなお祭りの日に活動する委員会ってなんだろう?藤宮くん、なんの委員会に入っていたっけ。
 でも、そっか。誰かと一緒に文化祭をまわっていたわけじゃないんだ。そっかぁ、よかった。


 ほっと胸をなでおろしていると、藤宮くんも私に質問を投げかけてきた。