あのあと本当に傘から追い出されるかと思ったけれど、藤宮くんはわざわざうちまで送ってくれた。きっと藤宮くんのお家まで遠回りだっただろうに、彼のおかげで私は風邪を引かずに今日も元気に登校できた。
ついに私達が住む地域でも梅雨入りが発表され、昨日に引き続き今日も雨が降り続いていた。まだ朝だというのに薄暗い教室は、息をするだけでも気分が落ちそうだったけれど、今日の私はそんなじめっとした空気など全く気にならないほど、なんだか晴れやかな気持ちだった。
教室に入り、自分の席へと向かう。前の席では椿が机に伏せて寝ていた。
雨だけど部活の朝練があったのかな。そろそろ朝のホームルームも始まるし、ぐっすり寝ているところ申し訳ないかなと思いつつも肩をとんとんと叩いた。
「おはよー!」
彼は寝ぼけ眼でこちらを見ると、これまた眠そうに返事をした。
「はよー…」
私が机に鞄を下ろすと、彼は眠たそうに目をこすった。
「美音、なんでそんなに元気なの?」
「いつも通りだよ。椿こそ大丈夫なの?最近調子悪い?」
昨日の放課後の彼の様子を思い出し、そう聞き返すと、
「ああ、それは、昨日のことが気になってちょっと寝不足で…」
と言いながら、彼は眠たそうだった瞳をぱっちりと開け、「そうだ!」と叫んだ。
「昨日!」
椿が話しかけたところで、隣から椅子を引く音がした。