恋がはじまる日


 昇降口へ向かいながら、二人並んで歩く。
 最近の部活の話なんかをしながら歩いていたけれど、これでは部活動の時と話す内容が一緒だ。たまにはなにか違う話題はないかな、と思案していると、


「美音?」


 と後ろから聞き馴れた声がした。

 声の方を振り返ると、ジャージ姿の椿が立っていた。


「あ、椿!部活中?」

「え、ああうん、雨降るまでの間少しでも練習しようと思って…」

「そうなんだね」


 椿にしてはなんとなく元気がなさそうな気がする。さっきまではいつもと変わらず元気だったと思うんだけど。もしかして体調悪い?


「えっと、隣の…この前話してた部長さん?」

 そう問いかけながら、私の隣の菅原先輩に視線を向ける椿。

「うんそう、サッカー部の菅原先輩」

「こんにちは」

 と先輩が笑顔で挨拶する。「こんちは…」と椿も挨拶を返した。


「椿どうかした?元気なくない?体調悪い?」

 そう問いかけるが、「え、いや」と、どことなく歯切れが悪い。


「私帰るけど、あんまり無理しちゃだめだよ」

「お、おう」と返事する椿の顔はみるみる青冷めていくように見えた。何かを迷っているような思案しているような不安そうな表情に見えた。


 本当に大丈夫かな?



 そうして私達は再び昇降口を目指して歩き出す。

 少ししたところで、菅原先輩が口を開いた。


「彼は友達?それとも恋人かな?」