恋がはじまる日


 のんびり藤宮くんを待っていると、「佐藤さん」と教卓の方から声を掛けられた。

 声の主は、クラスメイトの山下くんだった。私はあまり話したことがないけれど、確か椿のお友達で、お昼を一緒に食べている姿を見掛けたことがあった。私になんの用だろう?


「山下くん、どうかした?」


 そう返答すると、「俺、今日日直で、よかったらノート運ぶの少し手伝ってほしいんだけど」と言われた。

 六限終わりに集めた英語のwritingのノートだ。男の子とはいえ、一人で運ぶのはしんどいのかもしれない。


 以前私も日直の時にノートを教務室に運んだことがあった。結局途中で落としてしまって、藤宮くんがみんな運んでくれたのだけど。あの時一人で運ぶ大変さを痛感したので、私は快く引き受けた。


「うん、いいよ」


 藤宮くんが戻ってくるまでにはまだ時間があるだろうし、英語の教務室なら2Dの教室からは然程離れてはいない。

 三分の一ほどのノートを私が持ち、残りは山下くんが持ってくれた。