恋がはじまる日


「気を付け!礼!」
「お疲れさまでした!!」


 午後六時十分前。本日の部活動終了。


「お疲れ様です!」

 そう言いながら、サッカー部員たちにタオルとスポーツドリンクが入ったボトルを手渡す。
 一息ついた部員たちはへとへとな身体を引きずりながら、ロッカールームへと向かっていく。

 大会前ということもあり、やはりみな気合が入っていた。毎日毎日ハードな練習でかなりきつそうだ。マネージャーの私達にもなにかもっとできることはないのかな。

 そんなことを考えながら、ボールや備品の片付けを始める。


 ふと校庭の西側を見ると、まだちらほら練習をしている陸上部の姿があった。当然そこには幼なじみの椿の姿もあって、ほんの少し見ていただけなのに、彼は私に気が付き、手を振ってくれた。私もそれに答えるように小さく手を振り返す。


 すると、とんとん、と後ろから肩を叩かれた。
 振り向くとそこには、


「佐藤さん、お疲れ様」

 にこりと微笑むサッカー部部長、菅原 佑輔(すがわら ゆうすけ)先輩がいた。


「菅原先輩!お疲れ様です!」

 私は慌てて挨拶を返す。首にかけたタオルで汗を拭いながらも、先輩は疲れを見せない笑顔で微笑む。


「佐藤さんも疲れたでしょう?片付け、なにか手伝おうか?」

 相変わらずの爽やかすぎる笑顔、眩しい…。


「だ、大丈夫です!片付けもマネージャーの仕事のうちですから!」

「そう?無理しすぎないようにね」

「はい、ありがとうございます」


 先輩はいつも私達マネージャーにまで気を遣ってくれる。先輩だって疲れているはずなのに。