恋がはじまる日


「おい、そんな言い方ねえだろ!女の子にぶつかっておいて!」

 椿は藤宮くんを睨みつける。

 しかし当の藤宮くんに態度を改める様子は全くない。


「誰お前?こいつの彼氏?」

「かっ!…違うけど…」

「お前には関係ないだろ」

「ある!関係ある!俺はこいつの幼なじみだ!」

「へぇ…幼なじみって、そんな子守りみたいな真似しなきゃなんねえんだ?大変だな」

「てめえっ…」


 今にも手を出しそうな椿を宥めようと、私は慌てて彼の制服を引っ張った。


「ちょ、ちょっと落ち着こうよ、ね、椿?」

 椿は驚いて私を見る。


「なんで止めんだよ、美音だってむかつくだろ?」

「ぶつかった私が悪かったんだし、そんなに怒らないで」

 そう言うと彼は渋々頷いて、「美音がいいなら…」と、相変わらず不貞腐れたような顔をしてはいるが、ひとまず大人しくなってくれた。

 いいとは言えないかもだけど。


 椿が怒ってくれたおかげか、私は少し冷静になれていた。