恋がはじまる日


「えー、今日からこの学校に通うことになった、藤宮だ。じゃ、自己紹介」


「どーも、藤宮凌太((ふじみや りょうた)です」


 彼は今朝と変わりのないぶっきらぼうな態度で、とても短い挨拶をした。かなり面倒くさそう。

 前の席に座る椿が、私を振り返って小さく尋ねる。


「もしかして、さっき話してた今朝のやつって、あいつ?」

 わたしはこくこくと何度も頷く。

「へーあいつが」

 そうぼそりと呟きながら、椿は藤宮凌太と名乗った男子生徒をまじまじと見ていた。


 まさか転入生とは思わなかった…しかも同じクラス…。

 気まずさを感じていると、先生がふと視線をこちらに向けた。


 ん?

「席は、佐藤の隣を使ってくれ」


「えっ!?」


 隣!?
 確かに隣の席が空いているとは思っていたけれども!転入生、隣の席、これまた私が喜びそうな少女漫画の展開ではあるけれども!

 私が驚いている間に、藤宮くんはまっすぐにこちらへ歩いてくると、私の右隣の席に座った。

 先生が分からないことは教えてやれよーとか、周りの女の子がひそひそ話しているのが薄っすら聞こえた気がしたけれど、そんなことより私はどんな顔をしてよいのかわからず、冷や汗が止まらなかった。

「体育館で始業式あるから、ぼちぼち移動してくれー」

とホームルームは終わっていた。