とりあえず落ち着こうと気を取り直し、目線を上げると目の前の夜景に息が止まる。

一面ガラス張りの窓から、都会の夜景がキラキラと輝き遠くにはスカイツリーまで見える。

思わず窓際に駆け寄って眺めてしまう。
「うわぁー、綺麗。」
感嘆の声を上げる。

「気に入ってくれた?」

振り返ると、いつの間にかコーヒーカップを2つ持った要がいて優しく微笑んでいる。

「あ、ありがとうございます。」
コーヒーを渡されてお礼を言う。

「景色が気に入ってここにしたんだけど、なんせ広すぎて1人じゃ持て余してる。」

「一緒に住まないか?」

「えっ⁉︎」

びっくりしてコーヒーカップを落としそうになる。

先生の言葉にイマイチ理解出来ず、紗奈は首を傾げる。

「あの……どう言う意味ですか?」

「部屋が余ってるんだ。どこ使ってくれても構わないし、気に入らなければ好きに変えてくれてもいいよ。」

「はい⁉︎」
ますます、分からなくなって瞬きを繰り返す。
そんな紗奈を、要は可笑しそうに笑って見つめている。

「君を1人でほっとけないんだ。

ここは学校からも近いし、便がいいからスーパーもコンビニも歩いてすぐだよ。」

「せ、先生……、私は、その、ただの生徒です…ダメだと思います…こう言うの…。」

紗奈はなんて答えていいか分からず言葉を探す。

「本当は明日、ご飯でも食べながら話そうと思ってたんだけど。
君は、危なっかしくて見ていてハラハラするし、勢いに任せて連れて来ちゃったから、もう逃げられないよ。」

コーヒーカップを取り上げられ、ソファに座る様に促される。
要は机にカップを2つ並べて置き、紗奈の隣に座る。