女子生徒から蕩けるような目で見つめられ、注目を集めているこの男子生徒の名は、天王寺尚(てんのうじなお)。高校三年生で、この学校の生徒会長を務めている。

尚の家は、江戸時代から続く由緒ある家系だ。日本全国に会社を持ち、彼の祖父は政界にも顔が利き、彼の祖母は有名なお茶の先生、彼の叔父は警察官のお偉いさんと身内も有名人が多い。

尚の存在、尚の家柄は、この学校に通っている人間ならば誰もが知っている。結衣も入学してすぐ、クラスメートたちの会話から彼のことを知ったほどだ。

そんな尚は今、女子生徒たちに取り囲まれて「我が家で開催されるパーティーに来ませんか?」や「私の別荘に遊びに来ませんか?」など誘われている。みんなブランド物を身につけ、可愛らしい女の子ばかりだ。

(イケメンで家もすごいとモテモテなんだなぁ……)

これほどモテている男子を見るのは、結衣は初めて嫌でも見てしまう。すると、お嬢様に囲まれている尚と目が合った。尚はニコリと幸せそうに微笑み、結衣の胸がドキッと音を立てる。