私立白馬高校、会社社長のご子息やご令嬢、政界や警察関係者、芸能人の子どもも多く通っている。つまり、お金持ちしか通えない高校ということだ。

みんなプライドが高く、ブランド物を見に纏っている人の方が多い。そんな学校に通うごく普通の家庭の女の子が一人いる。

放課後のグラウンド、陸上部のユニフォームを着たショートカットの女の子が走っていく。他の陸上部の部員は公園でジョギングをしているかのようにゆっくりと走っているのだが、その女の子は誰よりも早く走っていく。そのため、多くの人から注目を浴びていた。

「誰ですの、あの子?」

「陸上の特待生で入った子ですわ」

「髪も短くて、何だか男みたいだよな。一般家庭の子ってあんな感じなの?」

「あれはときめかないなぁ」

グラウンドをチラリと見た人たちがヒソヒソと話す。だが、体全体を動かして走る女の子の耳には届いていない。今はそんなことを気にしている余裕などないのだ。

(やっぱり走るって最高!楽しい!)

ボーイッシュなベリーショートに、余計な肉がついていない体、日に焼けた小麦色の肌をしている明るい印象を覚える女の子の名前は暁結衣(あかつきゆい)。小学校から陸上をやっており、高校は特待生としてこの学校に入学した。